それでも寄せ集めて固めたお肉は美味しい
最近よく行くインド料理屋がある。
高校生くらいまでは、インド料理屋はいかついインド人が店の前をいつもウロウロしている怪しい店だと思っていた。
しかし大学時代に友人に連れられて行ってからはすっかりその味の虜になってしまった。
月に一度は食べたくなる。
つい先日もどうしても食べたくなり一人インド料理屋に入ったが、そこでママさんたち10人がランチ女子会を開いていた。
おそらく小学生のお子さんがいると思われるママさんたちは、学校のイベントや宿題のことから芸能人の話まで、かしましくおしゃべりしていた。
2テーブルに分かれてはいたが、それぞれに尽きるこなく話続けている。
私はそんなママさんたちのおしゃべりとインドのミュージックビデオをBGMに、注文したカレーグリルセットを堪能していたのだが。
「サイコロステーキって、何の肉かもわからないクズ肉を寄せ集めて固めたものなんですって!怖くて食べれたもんじゃないわ」
気づけばママさんたちの議題は肉についてになっていた。
もちろん家庭を持つママさん方が食に関して興味を持つのは当たり前のことであるし、大変重要なトピックであることもわかる。
だがしかしここは飲食店である。
私はつい目の前のどうみてもつくねに見えるケバブを見下ろした。
ケバブといえば夜店なんかででかい肉を吊り下げてその場で削ってくれるあれを思い浮かべるが、調べてみるとトルコ発祥の肉料理の総称らしい。
一般的にイメージされるケバブは薄切りの羊肉を何層にも重ねてあの大きさの塊にしているらしく、一口サイズに切った肉を串に刺した焼き鳥スタイルのものもあるらしい。
つまりスパイシーなつくねみたいと思っていたこれも、メニューにある通りケバブなのだ。
大変美味しい。
話を戻すと、サイコロステーキは小さい肉切れを押しかためてサイコロ状にしている謎肉らしい。
私は目の前にあるケバブを見つめた。
つくねやハンバーグも細かい肉を押しかためたものだけど、これはどうなのだろうか。
ケバブは主に羊肉を使うらしいけど、最近は牛肉のものもよくあるという。
もしかしたらよくわからない肉が使われているかもしれないし、今食べているものもケバブと名がついているけれど実際何の肉かはわからないじゃないか。
つまり私は、急に自分が食べているものが不安になったのだ。
何となくソワソワした気持ちでスマホでケバブとサイコロステーキについて調べていたが、気づけばママさんたちは次の議題に移り、そしてかしましく店を後にしていた。
結局いくら食べてもこのケベブは何の肉なのかわからなかった。
ただ確かなのは、何度でも食べたくなるほど美味しいということ。
何というか、めちゃくちゃ細かくされて加工されてもう一度くっつけている点で、サイコロステーキもケバブもハンバーグもそんなに差はないんじゃないか。
もっというとソーセージやハムも似たようなものじゃないか。
いくら普段スーパーマーケットで、やれ中国産がどうのそれ添加物がどうのと気にしていても、飲食店で出される食べ物は明確に産地や調味料を明示していない限り防ぎようがない。
要は食べ過ぎなければいいし、栄養バランスが偏らないようにすればいいのだ。
成型肉で亡くなったなども聞かないのだし、そんなに神経質にならなくてもいいのではないだろうか。
美味しいものは美味しい。
私は考えるのを辞めて、ケバブの最後の一口を頬張った。